キャプテン翼 ◎◎灼熱の中南米カップ ◎◎

日向小次郎を中心とした日本イレブンが、コロンビア・パラグアイ・チリ・ペルーなど中南米の個性豊かなチームやライバルと対戦するオリジナルストーリーです!

中南米カップ 第9話

■開幕戦!チリ vs 日本

波乱含みの開幕フェスから明けて2日後。
メキシコシティにあるサッカースタジアム、エスタディオアステカ、別名アステカスタジアム、世界最大級の収容人数を誇るこのスタジアムにて、中南米カップ開幕戦、チリvs日本の試合が始まろうとしていた。

日本側の控室の日本イレブンもさすがにピリピリとした雰囲気だ。

ホワイトボードには今大会の対戦表が掲げられている。

■Aグループ
チリ、日本、ベネズエラパナマ

■Bグループ
パラグアイ、韓国、コスタリカニカラグア


■Cグループ
ウルグアイ、ペルー、ジャマイカ、グアマテラ

■Dグループ
メキシコ、コロンビア、ボリビアエクアドル

各グループごとに総当たり戦を行ない、その上位2チームが決勝トーナメントに進出できる方式である。

部屋の中央には、軽くウェーブのかかった髪に淡いカラーの入った眼鏡をキラリとさせた中年男性。
今回の日本代表監督、北詰誠である。
名門東邦学園サッカー部の監督として同校を何度も全国優勝に導いたキャリアを持つ智将である。
今大会急な参加決定だったためスケジュールが合わずなかなかオファーに応じてくれる監督がいない中、日向の事情を知ってか唯一オファーに応じてくれたのが北詰監督だったのだ。


「今回のスタメンを発表する!」
彼はそう言うとおもむろにホワイトボードに今日の試合にフォーメーションを張り出した

FW:日向 若島津
OH:弓倉  岡野 沢田
DH:松山 葵
DF:早田 石崎 次頭
GK:若林

今回どうしてもスケジュールの調整がつかず不参加の翼・岬は外れているが
ドイツから昨晩到着したばかりで右腕のケガの完治していない若林も名を連ねている。
大事な初戦、落とすわけにはいかないという北詰監督の決意がみてとれる。


そして北詰監督は続ける。
「対戦相手のチリは、スタミナと運動量の豊富なタフな選手が多いチーム。そしてそれを生かした激しいゾーンプレスを基本戦術とするチームだ。ゾーンプレスは通常はスタミナを消耗するから試合の要所要所スポットで使うのがセオリーだがチリは試合中通してフルスロットルのプレスをかけ続ける「フルタイムフルスロットルゾーンプレス」を基本戦術としている。
前半からそして前線からガンガン激しいプレスを仕掛けくる。押し込まれないように試合を進めてくれ!」

どうやら中盤を制圧されないためのダブルボランチ中盤厚めの布陣のようだ。

「フルタイムでゾーンプレスってどんなブラック戦術だよ..。」
とスタミナと気合には自信のある石崎もさすがに引いている。


「続けて僕が要チェック選手について解説するんだな。」
井出が前に出て解説を始める。

チームの中心になるのは何といっても背番号10チリキャプテンで司令塔のアンヘル・ビジャーロイングランドプレミアリーグリバプール所属、司令塔としてのゲームメイク能力やキャプテンシーに加えて屈強なフィジカルと試合中ぶっ続けでプレスをかけ続けることのできる無尽蔵のスタミナが持ち味の選手なんだな。標高の高いアンデス山脈の山村で育った事に由来する肺活量やタフさから"アンデスの鉄人"とか"鋼の心臓を持つ男"とか呼ばれているんだな。今年から当たりの強さでは世界最高峰と言われるイングランドプレミアリーグでそのタフさに磨きをかけているんだな。」

「フェスで会ったボール押さえ込みヤローか...。」「"アンデスの鉄人"アンヘル・ビジャーロ...。」
ゴクリとする日本イレブン。

井出はさらに続ける。
「もう一人のキープレーヤーは背番号7のミッドフィルダー、"いたずらっ子"イバン・ピント。小柄ながらも敏捷性と運動量に長けた選手で特にこぼれ球を拾う上手さに関しては世界でも屈指と言われているんだな。それに加えて南米選手特有のマリーシア(ずる賢さ)も持ち合わせているんだな。中盤を駆け回って相手を引っかき回すタイプの選手なんだな。」

「あのイタズラちび助かー。」と葵が自分もチビである事は棚に上げてつぶやく。

井出はさらに付け加える。
「もう一人挙げるとするなら、背番号5パワータイプのディフェンシブハーフのホセ・ガッティ。気合いと根性、スタミナとパワーには定評のある選手なんだな。獰猛なチャージと後方からのパワフルなロングシュートは要注意なんだな。」

一方のチリ側控え室。

チリイレブンの中心には日本の北詰監督とは対照的なワイルドな風貌のエスタージョ監督、「フルタイムフルスロットルゾーンプレスの提唱者であり緻密な戦略性こそないものの気合いと勢い、精神論と根性論で選手を盛り上げるタイプの叩き上げのベテラン司令官である。数多くの実戦で培ってきた勝負強さから"喧嘩屋エスタージョ”などと呼ばれている。


「今日もいつもどおりの「炎のフルタイムフルスロットルゾーンプレスでブッチぎっていこうぜー!!Esfuerzate(エスフェルサーテ:頑張れ)!!」とアツくゲキを飛ばす。
「Si!Animo!!」とイレブンも力強くそれに応える。
特に熱狂的なエスタージョ監督信者であるホセ・ガティは異様なまでにアツくなっている。
ムードメーカーのピントも、それほどアツい性格ではないものの面白がってノリノリで場を盛り上げて騒いでいる。

と、イレブンのハイテンションっぷりとは裏腹の口調でキャプテンマークの腕章を右腕に付けながらビジャーロが訊ねる。
「監督、アイツとはまだ連絡がつかないんですか?」


エスタージョ監督は、チッと舌打ちして。
アギラールのヤローか。急に放浪の旅に出て野性を研ぎ澄ませてくるとか言って消息不明になりやがって。
今日中には合流するとか言ってやがったが、戻ってきたとしても当面試合に出すつもりはねー。どうせ予選リーグやツバサ・オオゾラ抜きの日本くらいは奴なしでも余裕だからな。」
と不機嫌そうに答える。


「ドイツブンデスリーガハンブルグの正ゴールキーパーカバヤシ。奴を擁する日本、あまり舐めない方が良いと思いますよ。」
とビジャーロは瞳をギラリとさせる。
どうやら同じ世界クラスのトッププロである若林をかなり意識しているようだ。

数分後、ピッチにはすでに両チームイレブンが散り始め、間もなく試合が始まろうとしている。
チリの選手は、身長こそ欧米人ほどは高くないものの、ヨーロッパ人とアメリカインディアンの混血であるメスティーソ多くがっしりとした体形に褐色の肌、日本イレブンと比べるとかなりタフそうである。

アナウンサーが解説を始める。
「さあ、いよいよ中南米カップ開幕戦、チリVS日本の試合が始まろうとしています。それでは両チームのスターティングメンバーを発表いたします。
まず日本。フォワード9番コジロー・ヒューガ、15番ケン・ワカシマヅ、...」
と続き
「...ゴールキーパー1番ゲンゾー・ワカバヤシ」

と若林がアナウンスされたところで一際大きな歓声が上がる。
さすがにドイツブンデスリーガのトッププロ、ここ中南米メキシコの地でも知名度・注目度はかなり高いようだ。

アナウンサーは続ける。
「続いてチリ、フォワードは....そして、ミッドフィルダー 10番アンヘル・ビジャーロ、..」
ここでは若林の時よりもさらに大きな歓声が上がる。
ここ中南米メキシコの地ではビジャーロの方が知名度は若林よりも上のようである。

続いて
「7番ティト・ピント、ディフェンシブハーフ5番ホセ・ガッティ...」
とアナウンスされると、ここでもなかなか大きな歓声が上がる。

来期からブラジルのサントスへの移籍が決まっているピントとチリのトップチームCSDコロコロの主力選手であるガッティもなかなかの人気である。

と、ディフェンダーの石崎がわざわざフォワードの方へかけよって
「オーイ日向ー、同じプロでも1部と2部だと知名度に差があるみてーだな(笑)。
とイタリア2部リーグ・セリエBに所属し今回は特に歓声の挙がらなかった日向を軽くからかう。

てっきりシバかれると身構えていた石崎だが、日向は全く気にする様子もなく
「みてーだな、試合後にはその評価、一変させてやるぜ。」
と瞳をギラリとさせている。

(ハハッ、そういやこーゆうヤツだったな..)
と呆れる石崎だった。