キャプテン翼 ◎◎灼熱の中南米カップ ◎◎

日向小次郎を中心とした日本イレブンが、コロンビア・パラグアイ・チリ・ペルーなど中南米の個性豊かなチームやライバルと対戦するオリジナルストーリーです!

中南米カップ 第15話

■最後の1ピース

「弓倉さんのこのプレイは...」
日本ベンチでも弓倉のプレイに対する懐疑の念が高まるが
「いや、だんだんタイミングが合ってきてる。このプレイはもしかしたら日本の中盤攻略の最後の1ピースになるかもしれないぞ。」
と井沢がつぶやく。

そんな展開が続く前半終了間際、またしても松山から託されたパスが弓倉へ向かう。
前線の状況を視認しながらパスコースへ走り込む弓倉は
「ここだ!ここしかない!!」
と瞳をギラリとさせる。
前半終了間際、一瞬気の緩んだチリのディフェンスラインが僅かに乱れているのだ
それにスタミナでは劣る日本、後半に入ればますます苦戦を強いられるだろう。決めるならここしかない。

しかしトラップ&パスモーションに入る弓倉に何かの危険を察してか先ほどまではマークを外していたはずのビジャーロが襲いかかる。
さすがの危機察知能力である。
しかし、そこに日向が弓倉とビジャーロの間に体を入れて防ぐ。
そして
「頼んだぜ、キャプテン!」
と叫ぶ。
「サンキュー日向!」
そう返しながら緻密にコースとタイミングの計算されたパスを前方へ繰り出す。



美しい奇跡を描くパスを左サイドの岡野が俊足を飛ばして受け取る
ギャラリーが一斉に注目する線審オフサイドフラッグは...上がらない。


あーっとこれはチリのゾーンを切り裂く弓倉君の鮮やかなツーステップスルーパスだー!!」
とアナウンサーが興奮気味に叫ぶ。


「これこそが監督が弓倉さんをトップ下に据えた意図...」
と興奮気味の井沢と自慢のサングラスをくいっとして思わず前のめりになる北詰監督。

翼と岬が不在の日本、高めのプレスで押し上げられたチリのディフェンスラインを切り裂く決定的なパスを繰り出すことのできる選手は弓倉をおいて他にいない。

「行けー!」
日本ベンチの声援を受けて快足を飛ばす岡野はゴールエリアへ近づくと
フォワードの若島津へとセンタリングを蹴り出す。

が、その瞬間クイッと軽くその裾が引っ張られる。
またしても”いたずらっ子”ピントである。

わずかに体勢を崩された岡野のパスは、走り込む若島津の後方の高い位置へと逸れてしまう。
「ああ~...」となる日本イレブン。
しかし若島図は高々と空中へジャンプして叫ぶ。

「このボールは意地でも絆ぐ!」

そして空中で反転して、空手の回し蹴りの要領でボールを後方へはたく。


そして、そのボールへ向かうのはさっき中盤で弓倉をサポートしていたはずの日向だ。

空中での回し蹴りからしなやかに降下する若島津の影とボールへと勢いよく飛翔する日向の影が交錯する。
あーっとこれは若島津君のローリングパスからの日向君のジャンピングワイルドタイガーショットだー!!」
と叫ぶアナウンサー。

ドギャッ!!
その日向の放つその鋭い弾道はチリゴールの左隅へと鮮やかに突き刺さるのだった。
「決まったー、ゴオオーーーール!!キーパー一歩も動けず!終始チリが押す展開でしたが初めにゴールを決めたのは日本だー!
と絶叫するアナウンサー。

苦戦の中での先取点、それにフォーワードにコンバートして間もない若島津と日向、東邦コンビの空中での共演に日本イレブンも大歓喜だ。

ピピイーーーーーー!!
そしてここで前半終了のホイッスルが鳴り響くのだった。

キャプテン翼マガジン vol.8 2021年 9/4 号 [雑誌]: グランドジャンプ 増刊