中南米カップ 第16話
■パタゴニアの暴れん坊
前半を終えたチリの控室は重苦しい空気に包まれていた。
終始試合を優勢に進めながらも最後の最後で1点のビハインドを負
ガコッ!とロッカーを拳で叩いて悪態をつくガッティ。
「クッソー、なんであんな奴らに。どうなってやがる!?」
そんなガッティをビジャーロがたしなめる。
「落ち着け、ガッティ。奴らは強い。それだけの事だ。」
ビジャーロはさらに続ける。
「ドイツ・ブンデスリーガのワカバヤシだけじゃなく、
少し間をおいてビジャーロは続ける。
「けど、後半はスタミナに勝る俺達の方が有利だ。
そう言い放つビジャーロの瞳は前半戦の試合中よりもさらに強い輝
相手が強いほど、そして逆境でこそ、その真価を発揮する。
ビジャーロの一声で気持ちを立て直したチリイレブンだったが、
(ユミクラがあのツーステップスルーパスを繰り出せるとなると、
それがビジャーロの憂いの理由だった。
と唐突に控室のドアが荒々しく開かれ、一人の大男が顔を出す。
「アギラール!!」とチリイレブン。
試合前にビジャーロとエスパージョ監督がちらりと話題にしていた選手
「やー、ワリ―ワリ―。ちょっと遅くなっちまったぜー。」
悪びれた様子もなく、そう言うアギラール。
その大男にビジャーロはつかつかと歩み寄ると、
「バキイ!!」と鉄拳をくらわせ
「貴様!今頃、何しに来やがった!?」
と問いただす。
そんなビジャーロをエスパージョ監督はたしなめる。
「まあ、待て、ビジャーロ。」
そして、アギラールに向かって
「アギラール、
ない、と言いかけた監督だったが、突如その口を止めて、
荒野の荒い風に晒されてバサついた波打つ長髪、
「フーン。どうやら、
エスパージョ監督はそう言うと、少し間をおいて続ける。
「ドイツ・ブンデスリーガのトップキーパー、ワカバヤシ、
アギラール、コイツからゴールを奪えるか?」
「バチィーン!」と右拳と左手のひらを合わせ、
「当然だぜ。」と応えるアギラールだった。