中南米カップ 第24話
■メキシコの奇襲
ピィィーーーー!
「さあ、いよいよメキシコvsコロンビア、後半戦開始です。」
とアナウンサー。
そして続ける。
「おーっと、メキシコは布陣を変えてきました。ミッドフィルダーのガルシア君がディフェンダーでしょうか。かなり低い位置まで下がっています。」
と言っている間に、メキシコボールで始まったボールは、バックパスを重ねて、そのガルシアの前へと転がされる。
そして、そのボールに向かって勢いよく走り込んだガルシアは、その巨体と丸太のような右足でボールを大きく高々と前方へと蹴り出す。
「ああーっと、これはまさかー...!?」とアナウンサー。
コロンビアのゴール手前まで到達しようといているボールに向かって、メキシコのアステカ太陽の5戦士がルチャ殺法で高々と飛翔する。
アルベスをスアレスが、サラゴサがロペスを上方へ投げ上げ、さらに空中でアルべスがロペスをそのまた上方へと投げ上げる。
「あーっと、これはメキシコ、ガルシア君の超特大フィードからのルチャ殺法だー!
メキシコの青い空に高々とアステカ太陽の5戦士が飛翔します!」
2段階のプロセスで仲間に投げ上げられ数メートルの高さまで舞い上がったロペスは
最高地点に達すると叩きつけるようなジャンピングボレーを放つ。
「決まったー、ゴール!後半開始わずか数分、ここメキシコの空にアステカ太陽の五戦士のルチャ殺法が炸裂しましたー。」
とアナウンサー。
大歓喜に包まれる観客席。
前半戦では、ジェペスにロングシュートに固執させるエスパダスの奇策が功を奏し、後半戦開始直後には、アステカ5戦士の奇襲が功を奏したメキシコイレブンは大歓喜である。
リスタートのために急ぐジェペスは思わず、センターサークルへ向かう途中で
「どきやがれ。」
とメキシコイレブンの一人を小突く。
「貴様!」
とカッとなるその選手を、アステカ5戦士の一人スアレスが制して、からかうように言う。
「よせよせ、俺達の奇策と奇襲がことごとくハマって苛立ってんだろ。可哀想だからそっとしといてやれよ。」
それを聞いてカッとなったジェペスは
「テメー!」
とツカツカと歩み寄る。
が、それをフォルテーザが制して
「ジェペス、いちいち格下の言う事なんか気にするな。さっさとリスタートするぞ。」
と言う。
「俺達が格下だと..!?」
と問いただすスアレスにフォルテーザは、当然だろ、とでも言うかのように
「ああ、奇襲や奇策っていうのは正攻法じゃ敵わない格下が仕掛けるものだからな。」
と軽く言い放つと、ジェペスをセンターサークルへと向かわせ、自分も持ち場へと戻る。
ピィィーーーー!
そして、試合再開。
フォルテーザの一言で落ち着きを取り戻したコロンビアイレブンは着々とメキシコゴールへとボールを進める。
確かに先程のようなアステカ5戦士の奇襲が通用するのは一度きりだし、ジェペスもロングレンジに固執しなければエスパダスからゴールを奪える可能性は高い。
1点のビハインドがあるとはいえ、地力で勝るコロンビアの方が優位かもしれない。
そんな空気感の支配するコロンビアイレブンは、1点のビハインドがあるとは思えない落ち着きのある試合運びを進めるのだった。