中南米カップ 第19話
■嵐の大地の荒くれ者
そんな後半25分、
そして、
「いい加減に堕ちやがれ、ワカバヤシ!!」
叩きつけるように振り落とされる右足。
ゴキャッ!!
徐々に精度が上がってきているそのシュートはゴールの枠内へと吸
コースも悪くない。
しかしそれでも若林はどうにか横っとび、
この試合何度目かのファインセーブである。
サイドへと逸れていくボール。
しかし素早くそのボールを拾ったのはピント。
すかさず中央へセンタリングを上げる。
そして空中で競り勝ったのはまたしてもアギラール。
彼は先ほどよりも更に高い位置からのハイジャンピングボレーの体
若林は横っとびから素早く立ちあがってはいるが、
「終わった...!?」
そんな空気が日本イレブンと日本ギャラリーに漂う。
「これでフィニッシュだ、ワカバヤシ!!」
そう言いながら振り下ろされるアギラールの豪放な右足。
と、そこに一筋の影と音声が過ぎる。
「いい加減に...」
日向である。
「...しやがれ!!」
とアギラールのハイジャンピングボレーにオーバーヘッドで応戦す
交錯する2人の右足。
ゴキャキャッ!!
そして日向にブロックされたシュートは大きくその軌道を変えてゴ
ドォ――――ーッ!!
空中でのハイレベルな攻防に湧き上がるスタジアム。
審判はコーナーアークを指し示している。
「サンキュー、助かったぜ、日向。」
そう言ってオーバーヘッドの後、
と、ボールを取りコーナーへ向かうビジャーロは、
そのざわめきの輪の中心にいるのはアギラール。
先ほどの空中戦の後、仰向けに倒れ込んだまま、
特に負傷等をしている様子はないようだ。
「おい、キミどうかしたのか?」
と審判が声をかけるが反応がない。
ビジャーロは急いで彼に駆け寄ると
「おい、キサマ、何やってやがる?」と声をかける。
アギラールはその質問には答えず、逆に
「なぁ、さっき俺を止めやがったあの日本の9番何者だ?」
と問いかける。
どうやら、絶対的な自信を持っている空中戦でシュートをブロックされた事を基にしているようだ。
ビジャーロは、やれやれというように答える。
「奴はコジロー・ヒュウガ。イタリア・セリエBのクラブの選手、
と淡々と言うとコーナーへ戻っていく。
そのビジャールの背後で
「クックックッ...」
と嗚咽とも笑いともとれる低く小さな声が地鳴りのように低く鳴
少しづつ大きくなるその声の主であるアギラールはノソリと立ち上がる
うつむき加減で長髪に隠れたその表情は読み取れない。
クックックッという声は断続的に続いている。
「2部..?」
「..2部の選手にこの俺が...??」
合間にそんな声も入り混じっている。
そしてその声は、徐々に二次関数的にその大きさを増し、
「クックックッ..クハッ...ハーーッハッハッハー!!」
と高らかな笑いへと変貌するのだった。
天を仰いで高笑いするアギラール。
一連の異様な光景にすっかり引き気味の両イレブンとスタジアムの
だが彼はそんな事にはまったくお構いなしに一人言い放つ。
「やっぱ、サッカーはおもしれーぜ!!」
そう叫ぶアギラールの表情はなぜか雲が晴れた空のようにすっきりして
そして、天高くを指差して、ビジャーロに
「さっきよりももっと上だ!!俺の遥か上にボールを上げろ、
それを受けて、(チッ、あのバカ...)とビジャーロ。
スポーツマンにあるまじき傍若無人な振る舞いはもちろんの事、
一瞬思慮を巡らせた後、しかしそれでもビジャーロは、
引き気味の表情の両イレブンの中にあって、一切の迷いのないギラギラとした瞳で真っ直ぐにボールを見つめるアギラール。
この場面を託せるのはヤツしかいない。
不規則な軌道を描くボールに翻弄される両イレブン。しかしそんな中でも唯一、
「さすがビジャーロちゃん、バッチリだぜ!!」
アギラールはオドけたようにそう言いながら風に煽られるボールの
「なにぃっ、
と、
「行くぜ、ワカバヤシ!これが俺にとっての母なる大地、
「...パタゴニアントルネードオーバーヘッドだーー!!」
そう叫びながら、、
その右足のスパイクがボールを捉えるその瞬間、
「くっ、日差しがっ...!?」
と一瞬顔をしかめる若林。
打点の高さゆえに若林のボールを追う視線と太陽の位置が交錯して
ドギャゴォッ!!!
そんな事はお構いなしに繰り出される激しい嵐のようなオーバーヘ
一瞬反応が遅れながらも懸命に飛びつく若林。
しかし、
「決まったーー、ゴォォーーーーーーーール!!!!
と絶叫するアナウンサー。
唖然とする日本イレブンと狂乱乱舞するチリイレブン。
アギラールとビジャールが、バチィン!とハイタッチし、
その他のチリイレブン、