キャプテン翼 ◎◎灼熱の中南米カップ ◎◎

日向小次郎を中心とした日本イレブンが、コロンビア・パラグアイ・チリ・ペルーなど中南米の個性豊かなチームやライバルと対戦するオリジナルストーリーです!

中南米カップ 第10話

■ファーストインパク

数秒後。
ピイィィィ――――――――――――!!
ホイッスルが鳴り響き
「さあ、いよいよ日本ボールで試合が始まりました!」
とアナウンサーが告げる。
そして日向がセンターサークルのボールをチョンと若島津へ渡す。
いよいよ試合開始である。


と、そこへチリFW陣がものすごい勢いで詰め寄る。

「!?」

"チリは序盤から激しいプレスを仕掛けてくる"、試合前から情報としては知っていた事だが実際に体感してみるとその勢いと激しさは事前のイメージをはるかに超えてくるものである

あわてて若島津はミッドフィルダー岡野へとボールを下げるが、そこへもすかさず激しいプレスが押し寄せ、彼もおもわずディフェンシブハーフの葵へとボールを下げる。

たちまちの内にフォワードからミッドフィルダーそしてディフェンシブハーフへとボールを下げさせられた日本にさらなるプレスが押し寄せる。
「あわわっ!」っとなった葵はフォローに入ったキャプテン弓倉にあわててボールを渡す。


と、弓倉にボールが渡った瞬間、チリ選手の目の色が変わり、すでにトップギアと思われていたプレスの激しさのギアが急にもう一段上がる。
「なにぃ!?」と日本イレブン。

しかし弓倉は
「させるか!」
読売サッカークラブ生え抜きの選手として磨き抜かれたテクニックで巧みにボールをキープする。

そこへビジャーロが猛然と襲い掛かってくる。
「あーっと、これは早速の両チームキャプテン司令塔同士の対決か!?」とアナウンサー。
キラリと瞳と瞳を交わす2人のキャプテン。

と、2人の選手に注目が集まった瞬間、弓倉のシャツが軽くスッと引っ張られる。
"いたずらっ子"ピントである。

「くっ!」
一瞬注意を逸らされた瞬間、ビジャーロの強烈なショルダーチャージが弓倉を襲う。
ガッ!!
軽く3メートル以上吹っ飛ぶ弓倉。
「あーっと、キャプテン対決を制したのはチリのビジャーロ君!日本キャプテン弓倉君、大きく吹っ飛ばされました、大丈夫でしょうか!?」
どうやらファールではないし怪我もないようだが、サッカーの試合ではあまり見かけないインパクトのある光景である

その瞬間、「Si(よし)!」と軽くガッツポーズをするチリ・エスタージョ監督。
そして「..勝った。」と二ヤリと小さくつぶやく。

観客席では、ウルグアイのビクトリーノが
「Oh,No!!お前のダチずいぶん派手に吹っ飛ばされたなー。
と隣の火野に語りかける。火野は
「ああ、"喧嘩屋"エスタージョ、早速仕掛けてきやがったな。」
と返す。
火野のそんな洞察は当たっていた。


「フルタイム・フルスロットル・ゾーンプレス」。
作戦と言えばこれくらいで具体的な指示をいつもほとんど出さないエスタージョ監督が今回出した唯一の指示がこれだった。


「試合開始直後に背番号7日本キャプテン・ユミクラを集中的・徹底的に叩け」
勝負は先手必勝、初めに一発ブチかまして主導権を取った方が勝つ、そのために相手のアタマを試合直後にぶっ叩く。
エスタージョ監督が立てた単純にして唯一の策がこれだったのである。

試合開始直後にキャプテンが3m以上ふっとばされてボールを奪われる。このインパクトは、日本イレブンを動揺させ、会場の空気を決定づけるのに十分なものだった。

浮足立つ日本と勢いづくチリ、ボールを奪われたのが低い位置という事もあり日本は一瞬にしてバイタルエリアに攻め込まれてしまう。
そしてゴール前の良い位置でボールを受けシュートモーションに入るチリ・10番ビジャーロ
「いくぜ、ワカバヤシ!」
「くそっ!来い、ビジャーロ!」と若林。

ドゴオオ!!
鈍い音を立てて鉄球のような重たいシュートが日本ゴールを襲う。
「くっ!」
しかし若林は横っとびで片手をどうにか届かせてボールの勢いを弱め、すかさずもう一方の手をさし添えてどうにかボールをセーブする。


「あーっと、ビジャーロ君、物凄いシュートでしたが若林君見事にこれをキャッチ!」
とアナウンサー。
「ドオオオオーーー!!」
ワールドクラスのスーパーシュートとファインセーブに大きな歓声とどよめきがスタジアムに響き渡る。

若林は
「ふうッ、なんて重たいシュートだ。プレミアに移籍した元チームメイトからヤツの情報を聞いておいて正解だったぜ。」
とつぶやく。
シュートが異様に重たい、この事を事前に知らずに片手だけでセーブしていたらおそらくボールの勢いに負けてゴールを許していただろう。

「いやー、試合開始からわずか3分、怒涛のチリの攻勢でした!しかしビジャーロ君と若林君、初めのワールドクラスのトッププロ対決を制したのは若林君、ジャーロ君のシュートも物凄かったですが若林君、それ以上の素晴らしいファインセーブでした!」
と興奮気味のアナウンサー。

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しかしこのトッププロ2人の表情はこのアナウンサーの言及とは裏腹の対照的なものであった。

「さすがだな、ワカバヤシ。しかし想定内だ、初めから一撃で仕留められるとは思ってはいないからな。この試合何度でも何度でもシュートを打ち込んでやる。持久戦・消耗戦なら誰にも負けるつもりはないぜ。」と静かなる闘志を燃やすビジャーロ
「ちっ..。」
一方の若林は、このビジャーロの意図を察してか、シュートを受けてまだジンジンとしている左腕の状態を確かめながら憂いの表情である。