キャプテン翼 ◎◎灼熱の中南米カップ ◎◎

日向小次郎を中心とした日本イレブンが、コロンビア・パラグアイ・チリ・ペルーなど中南米の個性豊かなチームやライバルと対戦するオリジナルストーリーです!

中南米カップ 第12話

■反撃へのムチャぶり!?

「もらったぞ、ワカバヤシ!」
ジャーロの右足が鋭く振り下ろされる。

と、そこに肉食獣のような獰猛で俊敏な一筋の影がビジャーロの足元をよぎる。
「なにイ!?」
日向である。
フォワード日向のスライディングタックルがビジャーロを襲いボールを奪った。

「あの9番、ペナルティエリア内で怖くねーのかよ。」
観客席では観衆のそんな声もチラチラ聞こえる。


フォワードが味方ゴール前まで下がる、それに自陣ペナルティーエリア内でのファールリスクの高い激しいタックル。
賛否や評価の分かれる際どいプレーに、低くザワつくスタジアム。

日向は、そんな事にはお構いなしに、すぐさま立ち上がると近くにいた葵にパスを出し
「葵、ドリブルだ!ドリブルで一気にゾーンを切り裂け!!」と叫ぶ。


「えっ!?ええ~~!??」と葵。
ドリブルは通常は相手陣内、特にゴール近辺で仕掛ける事が多い。抜けば決定的なチャンスになるし万一ボールを取られてしまっても味方ゴールから距離があるのですぐにピンチには直結しないからである。逆に味方ゴール近くでドリブルを仕掛けるという事は少ない。うまく相手を抜いたとしてもそれほど局面が変わるわけではないし、ボールを奪われたら決定的なピンチになってしまう。つまりハイリスクの割にローリターンだからである。

"正気ですか?全力でお断りします"、そんな意志をアイコンタクトで日向に送る葵だが、日向は有無を言わさない瞳でギラリと睨みつけてくるばかりである

(くっそー、日向さんのヤツ、イタリアでは俺の方が先輩なのに...)
そんな事を思いつつも、葵がずっと憧れてきた黄金世代の中でもエース級の日向の指示である。
断るわけにはいかない。それに...。
この位置からのドリブル突破、ちょっと面白そうである。

「よし!」
というと迫ってくる相手選手に対して...。
チョンと股の間にボールを通す。
葵の得意技の1つ、股抜きシュートの応用、股抜きドリブルである。
「なにイ!?」
てっきりキーパーに戻すかサイドに逃げると思っていたチリFWはまさかのドリブル、しかもまさかの自軍ペナルティエリア内での股抜きドリブルに完全に意表を突かれてあっさりと抜かれてしまう。

想定外の事態に浮足立つチリ選手をチョコマカとしたドリブルでさらにもう一人かわすと、葵は一気にギアを上げる。

「青い信号は止まらない!」
トップスピードに乗りこのセリフがとび出した時の葵のドリブルはちょっと驚異的である。
さらに一気に数人のチリ選手を抜き去る。
慌ててフォローに入ったピントがスッとシャツを引っ張ろうとするが、
「そうゆうプレイならイタリアで慣れっこさ!」
とこれも手ではたきながらかわす。

と、チリ中盤の底に位置するチリ中盤のディフェンスの要ガッティが
「バカめ、ボールを持ち過ぎだ!」
と立ちはだかる。

が、ここで葵は得意技、ルート・グーリット直伝の直角フェイントを繰り出す。
ちょこまかとした細かいボールピッチのドリブルから一転しての大きなストライドの直角のフェイントに対応できないガッティも瞬時に抜き去る。

「あーっと、葵君、まさかの味方ペナルティエリア内からのとんでもないドリブル突破です!日本ついにこの試合初めてセンターラインを突破しましたー!
とアナウンスされたその瞬間、
「No memes(フザけるな)!!」
と、斜め後方からミサイルのような直線的で猛々しいスライディングタックルが葵を襲う。
ジャーロである。

と、ここで
ピイイーーーーーー!!
とホイッスルが鳴り、ビジャーロイエローカードが出される。

観客席でウルグアイの火野が
「冷静なビジャーロが珍しいな。」
とつぶやくと、ビクトリーノが
「Haha-!どうやら"中盤のコンキスタドール"様は自分の絶対的な聖域を侵されてお怒りみてーだぜ。」
と返す。

「大丈夫か?」
と慌てて駆け寄る日向に、葵は
「イタタタタ、日向さんイタいっす。」
と恨めしそうな視線を向ける。

日向は、葵が負傷していない事を見て取ると、葵の視線にはお構いなしで
「見ろ、葵。」
と言って観客席に視線をやる。

「うおおおおーー、いいぞーチビッ子ー♪!」
戦術的には必ずしも褒められたプレイではないが、ここ中南米のギャラリーはそんな事はお構いなし、手放しで大喜びである。

「いいか、葵。流れが悪い時にはこんな風に何でもいいから一発ブチかまして流れを変えるんだ。」
と言うと不満顔の葵を尻目に、ボールを素早くフリーキックの位置へプレイスすると前方へ駆けだす。そしてタケシがスッとそのボールへ駆けより素早く日向へと蹴り出す。
息のとれたクイックリスタートに一瞬対応の遅れるチリイレブンを尻目に日向はセンターライン近くの位置から思い切りよく豪快な超ロングシュートを放つ。
その弾道は「チッ!」ゴールポストを僅かにかすめてゴールの枠外へと逸れていく。
得点とはならなかったもののゴールを鮮烈にイメージさせるその弾道に
ぞーっとす立ちすくむチリイレブン。そして「ウオオーーー!!」と盛り上がるギャラリー。

「くっそ!」
と軽く悔しがる日向だったが、この日向のシュートと葵のドリブルは試合の流れを転換させるのに十分なものだった。

「チッ、あの日本の9番、勝負のやり方を知ってやがる。」
苦虫をかみつぶしたような顔で悪態をつくチリ・エスタージョ監督だった。

【PS4】キャプテン翼 RISE OF NEW CHAMPIONS