キャプテン翼 ◎◎灼熱の中南米カップ ◎◎

日向小次郎を中心とした日本イレブンが、コロンビア・パラグアイ・チリ・ペルーなど中南米の個性豊かなチームやライバルと対戦するオリジナルストーリーです!

中南米カップ 第14話

■格好悪くても...

体の痛みのせいか屈辱のせいかなかなか立ち上がれない弓倉に松山が駆け寄り
「大丈夫ですか?」
と手を差し伸べる。

弓倉は起き上がりながら「サンキュー、松山。」
と言った後に
「この試合、キャプテンもトップ下もお前の方が適任かもしれないな。」
とつぶやく。

そんな弓倉に、いつの間にか駆け寄っていた日向が
「キャプテンだからって格好つけてんじゃねーぜ。監督が弓倉さんをキャプテン、そしてトップ下にしたのには何か理由があるはずだ。」
と言い放つ。
「なにぃ!?」
となる弓倉に対して、松山があわてて
「まぁまぁ、コイツはバカだからこんな言い方しかできないけど、日本語に訳すと、俺達にもっと頼ってくれって意味ですよ!俺たちにもっと頼って、弓倉さんは自分にしかできない事にフォーカスしてください。」
とフォローして持ち場に戻る。

その後も不調の弓倉を擁しながらも互角に近い中盤戦を繰り広げる日本イレブンだったが、少しずつムードはチリへと片寄りはじめていた。

中盤でボールを奪っても、その後の攻撃のビジョンやゴールへのイメージの立たない日本と何度も日本ゴールを脅かすチリ。
それに加えてスタミナに勝るチリが徐々に再びその攻勢を強めてい

「弓倉さん、ほぼ棒立ちじゃねーか。」
日本ベンチで再び心配の声が上がり始めている。

ゲームにほとんど参加せずにヨロヨロ動く弓倉を
「オラッ、邪魔だぜ!」
とガッティが通り過ぎざまに肩で小突くがまったく抗う様子もない
そんな弱々しい挙動を横目で捉えながらも
「こいつ...!?」とガッティはなぜか一つの違和感を感じていた。

ブツブツと夢遊病者のように
「オレにできる事、オレにしかできない事...。」
とつぶやく弓倉の瞳はまだ死んでいないからだった。

 

 


そんな前半30分、少しずつ日本のボール保有率が少なくなる中、松山が粘り強くチリボールを奪った瞬間、
突如弓倉が
「くれっ、松山!」
とパスを要求する。

迷わず放り込まれたパスを受けると弓倉は
トラップからの2タッチ目で前方へスルーパスを送る。

通常スルーパスを繰り出す場合、トラップからパスまでの流れは3タッチまたはそれ以上のタッチ数で行われる事が多い。
1タッチ目でトラップ、2タッチ目でボールを蹴りやすい位置に調整、そして3タッチ目でパスという流れだ。
2タッチでのパスは、トラップからパスまでの時間が短く相手のマークを受けにくいというメリットがある一方で、ファーストタッチでトラップと同時にボールを蹴りやすい位置に調整しないといけない上に、その間にパスコースなどの状況判断も行わないといけないため困難が伴う。
ルーパスなど高度な状況判断とパスの精度が要求されるパスならなおさらだ。

案の定、このパスもチリのゾーンプレスによる高めのディフェンスラインの前にオフサイドを取られてしまう。
「ああ~...」
一瞬弓倉の復調を期待した日本イレブンとベンチにがっかり感が漂う。


しかし、その後も弓倉はパスを要求し2タッチによるスルーパスを繰り返すがタイミングが合わない。
松山や葵が粘り強く奪ったボールを弓倉がほんの数タッチ・数秒のプレイで台無しにしてしまう。
ボールを受けるサイドの岡野やフォワード陣も何度も走らされる。

この光景は決して見栄えの良い光景ではなかった。
観客からも野次やブーイングが起き始めている。

弓倉をマークするガッティも
「情けない奴だな。そんなにボールを持ってタックルを受けるのが怖いのか。」
と侮蔑するが、弓倉は一向に意に介する様子はない。

「悪いな松山、それにみんな。ここは甘えさせてもらうぞ。どんなにかっこ悪くても今の俺にできるのはこれしかないからな。
心の中でそう呟く弓倉の瞳にはもう何の迷いの色も見出すことはできなかった。

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