中南米カップ 第4話
■メキシコシティ上陸!■
7月上旬、メキシコの首都メキシコシティ。
中南米カップの開催地となるこの地に、中南米の強豪が続々と集結していた。
乗せた飛行機もメキシコシティ国際空港にランディングしたところだ。
緯度20度弱、鋭い角度で容赦なく照りつける太陽の陽射し。
「アッチーなー?。こんなトコで試合すんのかよー?。」
とボヤきながらタラップを降りる石崎。
「ほんまや。早いとこパレタ食べんと死んでまうで。」
と相槌を打つのは大阪出身の巨漢ゴールキーパー中西太一。
(ちなみにパレタはメキシコ発祥のフルーツぎっしりのアイス)
「お前ら、メキシコに着いての開口一番がそれかよ。緊張感なさ過ぎだろ。」
とツッコミを入れるのは松山光だ。
今回日本は急な参加決定、そして急な代表メンバー招集だったにも関わらず、日向の事情を知り多くの主要メンバーが参加に応じていた。
と、イレブンがコンコースを歩いていると
不意に赤いジャケットの東洋人の集団と出くわす。
「コイツらは韓国代表??コイツらも参戦するのか??」(石崎他)
向こうも同じく日本イレブンに気付いたようで、赤い集団の中で一際ガタイが良くギラリとした目の青年が外国語で語りかけてくる。
「Hey!Japanese! xxxx ... 」
「あわわ、韓国語なんて分かんねーよ。」と石崎。
「ばか、英語じゃねーか。」
と浦部。
「どっちにしても分かんねーよ。おーい、三杉?。」
と英語の得意な三杉を探すが、彼は搭乗口の分からない外国人女性の道案内をしている最中だ。
「くっそー、あの野郎。こんな時にまで無駄にジェントルマンな野郎だぜ。」
と何だか訳の分からない悪態をつく石崎。
状況を察したその韓国人は
「ふっ、英語くらい喋れねーと国際ステージじゃ通用しねーぜ。
それに、大会の出場国くらい事前に調べておくモンだぜ。」
と見下したように言い放つ。
彼こそ韓国のパワフルフォワード、「剛の虎」の異名を持つ車 仁天だ。
何となく気圧される日本イレブン。
と、日本イレブンの中でも
やや小柄な青年が韓国代表の前にスッと進み出た。
漆黒の髪が軽くなびく。
優しげだが凛とした強い眼差し。
端整なブリティッシュ・イングリッシュで
彼はこう告げた。
「何だかバタバタしてしまって申し訳ない。」
「僕は今大会で日本のキャップテンを務めるノブユキ・ユミクラ。お互い良い試合しようぜ。」
と握手を求めて右手を差し出す。
サッカー選手としては小柄で華奢な体型だが無駄のない洗練された所作。
それに知性と自信を感じさせるつぶらな瞳。
何となく「ほー」となる韓国イレブン。
日向にも似た野生の嗅覚を持つ車も一瞬で彼の力量を認めたようだ。
バチィン!と力強く握手を返すと
「この大会、中南米以外の特別枠は俺たちアジア勢の韓国と日本だけ。
お互い暴れまくってやろうぜ!」
と言い放つのだった。
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